誰でも自分の自由にお金を使い、楽しく生きたいものです。
しかしながら、精神疾患や認知症などの理由で事理弁識能力が低下している人は自由な財産処分ができるままにすると散財してしまったり、犯罪に巻き込まれたり、他人との契約を守れなくなることがあります。
そうすると本人のためにも他人が本人の財産を管理する必要が出てくるのです。
他人の財産を管理する必要性がますます高まるであろうこの日本において、旧来より確立された財産管理制度が成年後見制度です。旧法では禁治産者という表現でした。
現在では精神疾患や認知症などの理由で事理弁識能力が低下している人に後見人を選任して、本人の財産を管理してもらうルールが確立していますね。
後見人は家庭裁判所が選任し監督するので、後見人は本人のために財産を使うことが徹底されます。特に日本人は長寿なので財産の減少をコントロールしないと生活費がすぐに底をついてしまうことが予想されるケースもあります。
他人の生活にかかる財産管理を丸抱えするのは予想以上に大変です。
成年後見制度の目的として本人の権利・財産を守ることがありますので、後見人は「本人のため」にしかお金を使いたくありません。将来の相続のために財産を移すことは「家族のため」であり「本人のため」ではないのです。
こういった理由で財産処分の自由度が無いとネガティブに評価され、信託なら自由に財産を処分できますよ。
という触れ込みで信託も宣伝されるようになりました。
信託は受託者に信託財産の管理・処分権限があるし、何より裁判所の監督がないので財産処分の自由度が高いのは間違いないでしょう。
ただし、受託者も信託の目的を逸脱して財産処分をすることは契約違反になり、その責任を負うことになります。だれか責任追及する人がいればの話ですが。
今後も誰かに財産を管理してもらわないといけないことが多くなると予想されますが、後見と信託のどちらが合っているのか。気になりますよね。
それでは例として、お年を召して今後誰かに面倒を見てもらう必要があると思う方がいる前提で考えましょう。判断能力はある前提ですよ。
【家族の関係性について】
1.家族が仲良し。親族の面倒を見る余裕がある。
→信託に向いている。
2.家族の縁が薄い。親族といえ他人の面倒まで見るのはしんどい。そもそも家族がいない。
→後見制度の利用が向いている。
【財産について】
1.預貯金、不動産などそこそこあって、相続人が複数人になる予定
→信託(遺言書)で財産の引継ぎ準備をした方がよい。
2.財産はそんなになくて、相続人が1名もしくは見当たらない。
→後見制度の利用が向いている。
【家族の考え方】
1.親や親族を最期まで家族で見守って大事にしたいし、家族で実現可能である。
→信託が向いている。
2.親や親族を最期まで大事にしたいけど、親族内での実現が難しい。
→後見が向いている。
こうして見ると
信託は、家族が仲良く、本人の資産があって相続人に分配できて、家族の想いが強い場合に向いていそうです。
後見は、家族の縁が薄く、相続対策の必要性がなく、家族で面倒が見きれない場合に選択されることが予想されます。
選択するというか選択肢がない場合にたどり着くイメージでしょうか。
信託はルールが定まっていないことが多く、確実性はまだ不明な点が多いです。
成年後見制度は人が関わる以上まったくトラブルが無いとも言えませんが、制度は安定しています。
コストも後見人に支払う報酬がありますが、人の面倒を丸抱えしてくれると考えれば高くないのではないでしょうか。
信託も後見も使わないで一生を終える方も多いです。一人で亡くなる方も、親戚でもない方に大事にされて亡くなる方もいます。
私は人生の後半をどうしたい。家族としてはどうしていけばいい。どうしてあげたいのか。
このような話の先に考えとマッチする法律制度を選んでいただくのがいいでしょう。