信託の案件のほとんどのケースで金銭の信託をするのですが、受託者は信託されたお金を分別管理しなくてはなりません。
受託者自身のお金と信託されたお金を分けるために、信託専用口座をつくることが望ましいと考えます。
不動産の場合は信託の登記が法律で整備されていますが、信託専用口座に関するルールは金融機関によって様々です。
以前は信託用の口座開設も手間がかかりましたが、最近は金融機関もガイドラインをつくってくれたり、依頼者本人だけでも口座開設できるようになりました。
銀行だけでなく、信用金庫も対応してくれます。
信託契約の内容もチェックしてくれるので、私としても助かります。
信託専用の肩書きのある口座をつくらなくとも、受託者名義の口座で分別管理をしっかりしていればよいという考えもあります。個人間、家族間のことなのでしっかり説明できれば分別管理という点ではOKだと思います。
財産保全の点からはどうでしょうか。
平成12年の最高裁判決で公共工事の請負者が保証事業会社の保証の下に地方公共団体から支払を受けた前払金について地方公共団体と請負者との間の信託契約の成立が認められた事例
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52289
というものがあり、特に信託用の名義をつけた預金でなくとも、分別管理の事実と、預金の使用目的だ定められていた事実から信託契約の成立を認めてます。この事例では受託者にあたる建設会社が破産しましたが、依頼者から預かったお金の管理口座は破産財団に組み込まれませんでした。
信託の倒産隔離機能がはたらいたのです。
裁判のレベルでは信託用の口座でなくとも信託財産として保護されそうですね。
でも裁判までいかなくて済むならそっちのほうがいい。
また、受託者が個人の場合、受託者に相続が発生すると、受託者個人名義の口座は全部凍結されると思いますので、やはり信託専用口座があったほうがよいかと思います。
ただし、「委託者A受託者B信託口」のような名義の口座であっても、実質は受託者B個人の口座と扱いが変わらないということもあるようです。金融機関のシステムの問題と思います。
信託された財産の効果を認識して口座作成を依頼したほうがいいですね。