家の名義を変えたい。
そんな相談が多く寄せられるようになりました。
こんなに暑いのに年上の相談者の来所が多く、恐縮です。
ご自身の高齢化や相続対策で家の名義を変えたいと相談にみえる方が多いんです。
今回は相談の一例をお届けします。
例
相談者
私は結婚2回していて、今の子供に家を残したいので、子供に名義を変えたいんです。
私は病気もしてるし、いつどうなるか不安なので今のうちにやっておきたいと思って。
菱田
そうですか。ご事情はわかりました。不動産の名義を変えると言いますが、法律的には家の土地・建物
の所有権が相談者様からお子様に移動すると考えます。そして、理由がないと移動できない決まりです。
理由としてはお子様の「売る(売買)」か「ただであげる(贈与)」かになります。
相談者
土地・建物で5000万円くらいの価値だと思いますが。お金はかかるのでしょうか?
菱田
売るならお子様に5000万円で買ってもらうことになります。
贈与としてタダであげることもできますが、贈与税が2000万円ほどかかるのでお子様にお金が必要です。
ご用意できますか?
相談者
名義を変えるだけで、そんなにお金がかかるんですか。。。
菱田
そうです。一般的には不動産は名義を変えるだけと考えますが、法律の世界では財産が移動すると考え
るのです。財産を動かすと何故か税金がかかる国なのです。
ほとんどの方がここで名義を変えることをあきらめます。
ですが最近は信託といって別の方法もできるようになりました。ご存知でしょうか?
相談者
聞いたことはありますが、よくわかりません。名義を変えることができるのですか?
菱田
はい。できるんです。でもちょっと複雑なのです。
法律的に正しく説明すると大変なのでとっても簡単にご説明しますね。
結果として、今のお子様の名義にできます。登記簿にもお子様の名義が入ります。
売買と贈与と違うところは、税務署だけは相談者様が生きている間、土地と建物は相談者様のものだと思っています。
世間ではお子様に信託すると不動産はお子様の名義です。
それでも税務署だけは信託しても相談者様の名義のままと認識します。
相談者様が亡くなると、税務署は不動産も相談者様の「遺産」と考えるので相続税の計算に土地と建物もカウントされます。
相談者様が亡くなったあとは信託が終わり、税務署も含めた世の中全員がお子様の名義だと認めます。
相談者
税務署が子供の名義と認めないとマズイことがあるんですか?
菱田
そんなことないんです。逆にラッキーです。お子様に名義を変えることができるのに、税務署にはそれが見えないから、贈与税や売買代金は払わなくていいいんですよ。
ですので、不動産の名義を変えるのお金をかけなくて済むんです。
相談者
それは助かります。名義を変えておかないと何だか気持ちがスッキリしなくて。
菱田
そうしましたら、お子様にもお話しください。お子様からも名義を変える了承いただいたら話を進めましょう。
相談者
わかりました。ありがとうございました。
はい。こんな感じです。
先にお断りしておきますが、税務署の方をバカにしているわけではないのです。
ほんとに会話ではこんな感じで説明するのがよく伝わるのです。「税務署にバレる。」とか
特に商売をやられている方は「税務署の目」を気にするので、あえてこういった表現をしています。
資産税については私も多少なりとも理解していますのでご了承ください。
信託の説明には苦労してきました。正確に説明するほど、相談者を不安にさせる気がしたので、今ではイメージと結果だけを最初に説明するようにしてます。
相談者の希望は子供に名義を変えたい。というシンプルな話です。そこを難しくしてるのは私なんだなと反省しました。
専門職としてはツッコミどころ万歳の説明ですが、専門的なことは相談者も把握しきれないので、いろんな論点は我々が信託契約をつくりあげていく道中でカバーすればいいのです。
信頼をいただき委任をいただく以上、お任せされたことはしっかりやらないとね。
「相談者の話を素直に聞く。」
菱田司法書士事務所の先代からの教えですが、ようやくわかるようになってきました。
おしまい。